偶然の学校

「ファッションが好きな私がファッション業界ではなく、広告業界を選んだ理由を新米なりに語ってみる」

 

私はファッションが好きです。
重要なのは、服ではなくファッションが好きだということ。
服を超えて、服1つ1つが重なり合うことで完成されるスタイルの在り方が好きなのです。
服が好きな人は、よくその服の歴史から紐解き、それを今度はテキスタイルに細分化して見て、と器用に深掘りしていく傾向にあるといわれますが、私はそういったことはしません。
服の組み合わせによって、全く服の印象が変わる、あの化学の実験のような作業が好きなのです。

ファッションスナップとの出会い

学生の頃からファッションが好きで、好きで。きっかけは覚えてませんが、気がつくと高校生の頃は、学校に私服をわざわざ持っていき、放課後公衆便所の洋室で着替えては原宿の街に繰り出すということを毎日していました。

その当時はファッションスナップの全盛期だったこともあり、とにかく自分のスタイルを認めてほしいという欲が溢れんばかりで、スナップに撮られることを目的にしていました。
そのため、当時は各マガジンのカメラマンの顔と名前、出没場所を覚え、その人に撮られたことのある人をSNSや原宿の古着屋で見つけては話を聞いてどうすれば撮られるか?を無我夢中に研究していました。

今思えば、この時は「ファッションが好き」ではなかったかもしれません。オモシロイことに、この分析時代はまあ撮られなかった。
おそらく「あー俺を早く撮ってくれー!!」という心の声が滲み出ていたのでしょう。

ある日、突然悟りました。これではだめだと。
というよりも何のためにこんなことしているんだっけ?と。そこから、自分が本当にしたいスタイルに忠実になると、今までの不調がうそのように撮られることができました。
結果、当時「真のオシャレさん登竜門」として数多のファッションキッズが目指していた某マガジンにも載せて頂くことができました。
この経験を通して、改めて「ファッションが好き」と思えるようになりました。

これほどまでにファッションが好きな私。
もちろん、将来の行く先は、
広告業界でした。

。。。。。。。。。。!?!?!?!?!?!?!

はい、広告業界です。
ファッション業界の道に進もうとは思いませんでした。
厳密にいうと、少し願望はあったのですが、本気で行きたいという気持ちになれなかった。

ファッション業界ではなく、広告業界を選択した理由

なぜ、これほどまでに好きなファッション業界ではなく、広告業界を選んだのか。
それは、自分が本質的に好きなことが見つかり、それをより実現しやすい環境が広告業界にはあったからです。

「好き」を仕事にすることはイイことだと思います。一方で例えば「ファッション」が好きな人は本当に「仕事」としてのファッションを好きになれるのか?と言われるとどうでしょう。
仕事、はたまた日常の業務にまでファッションを因数分解したときに、そうではないかもしれません。
私は学生の当時、ファッション業界にいくのであればスタイリスト、と思っていました。

なぜならスナップ活動の中で、「自分のスタイルを通して人を動かすことが好きだ」ということに気が付いたから。
「人を動かす」と書くと、少し抽象的な表現になるかもしれませんが、要するに私の組み立てたスタイルを見た人が、「いいなあ」と思ってくれて、結果的に真似てくれたり同じ商品を買ってくれたりとしてくれるということです。
自分のスタイルで人を感化する、ということです。

私は、いわゆるフォロワーが数千人いるようなインフルエンサーでもなんでもありませんでしたが、当時の原宿界隈の小さいファッションコミュニティで声をかけて下さる方々がたまにいたりすると、それはそれは嬉しかったですし、だからこそファッションがどんどん好きになったと思っています。
この喜びを仕事に昇華させるとなると、スタイリスト、とシンプルに行き着いたわけです。

でも、スタイリスト業界を紐解いていくと、その文化を好きになることができませんでした。
それを良しとする人もいるかと思いますが、スタイリストの業界は完全な年功序列師弟経営文化です。
必ずと言っていいほど、ファーストキャリアは既に活躍されているスタイリストさんに弟子入りし、4-6年のアシスタント経験を重ねたのちに、師匠さんの一部仕事を引き継ぎ、独立して行くわけです。
私は、個人的にゼロから自分の手で作り上げたもので自分の人生のレールを敷いていきたい人間でしたので、この文化が理解できませんでした。
なので、「好き」ではないことに気付いたのです。

そう、必ずしも「好き」が「好き」になるわけではないのです。
そんな壁にぶち当たった僕は、真っ先に広告業界に目を向けました。
理由は単純、広告エージェンシーの仕事は「人を動かすこと」だから。
スタイリストを選んだ動機との共通項が、そこにはあったから。

広告業界における「人を動かす」とは、消費者を動かす、ということになります。
広告会社の仕事は一概にくくれませんが、ざっくりいうと、事業会社のマーケティング活動サポートになります。
その中で制作を一任される広告(TVCMと言ったマス広告から、販促キャンペーンまでフォーマットは様々)に触れた消費者が、例えばその広告で取り扱ってる商品を買ってみるとか、その広告を見た人が「いいね」とSNSで投稿してくれるとか。
広告によって消費者が行動することが「人を動かす」ことだと私は理解しています。

広告業界に惹かれた何よりの理由は、「人を動かす」ことに手段も制限もない点でした。
究極いってしまえば、アパレルブランドのブランド広告制作に携われることができれば、スタイリングの領域で「人を動かす」こともできるんです。
そう思った瞬間は、もう広告業界しか見えていなかったです。

そう、私は「人を動かすことが好き」です。
本気で夢中になったものがあったからこそ、明確に見えたのだと思います。
「好き」の矛先を、少し具体的な行為に向けてみることで本質的に自分が「好き」なことがわかったということを。

私が矛先を変えることができたきっかけは「自己分析」です。
メソッド等は関係ないと思っています。コツは「自分を嫌いになるまで掘り下げてみる」ことかと。
自分のことを深掘りしていくと、必然的に自分の嫌な部分が見えてくるわけです。人間ですもん、必ずや自分の嫌な部分は皆さん持っているはずです。
そこが浮き彫りになるまで、過去の記憶を紡ぎながら言語化していくと、極地である「自分は最低な奴だ」となるはずです。
そこまで来れば自分を知れたということになると私は思っています。

ファッション業界と広告業界、遠からず近からずですが、今僕は広告業界の濁流にのまれながら楽しく日々を過ごしています。
その選択に後悔もしていません。
それが正解だったか不正解だったか、まだまだ新米の私には判断がつきませんが、好きなことを仕事にするのが難しそうと思ったら、「好き」の矛先を少し変えてみることをお勧めします。

筆者プロフィール

「偶然の学校」3期生飯村一誠
広告代理店勤務、アカウントプランナー。
2018年ヤングカンヌ日本代表選考会 PR部門ファイナリスト。
ファッション好き。ガリガリ卒業のため最近は筋トレに励む。
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