偶然の学校

「主体的に生きることで人生もっと楽しくなる。」

 

2018年秋、偶然の学校で『「仕事」は、やめよう!』というトークイベントを行った。「常識に囚われない働き方」をしている方にスポットライトを当てたトークイベントである。イベントのコンセプトは、とあるメンバーの「社会の歯車になりたくない」という言葉に着想を得た。

ゲストスピーカーとしてお招きしたのは、リーマントラベラー東松さんと、ロックバンドATATAのボーカル奈部川光義さん。そしてタレントの池澤あやかさんにファシリテーターを依頼した。

イベント企画時、私は社会人5年目。新卒入社した会社から転職をして、半年程経ったタイミングだった。「転職をする」という人生初めてのイベントは、私にとって刺激的な経験だった。一緒に働く人も変わるし、仕事内容も変わる。いままで当たり前だと思っていたものが、当たり前でなくなる。海外旅行に行くような、どきどきを感じていた。しかし半年程働いて、新しい仕事に慣れると新鮮さは薄くなっていた。仕事にやりがいはあったが、どこか人生に味気無さを感じていた。「社会の歯車になりたくない」という言葉に私は共感し、ゲストの方々のお話から現状を打破するヒントを得たいと考えていた。

ゲストの方々は超人ではない

自分のやりたいことをやるためにどうしたら良いか、突き詰めて考えているゲストの方々のお話はとても興味深かった。

リーマントラベラー東松さんは激務の広告代理店で働きながら、週末を利用して世界一周旅行をした方。世界中を旅した自身の経験をまとめた本も出版している。「金曜の夜から月曜の朝までが休み」と語る東松さんは、好きな旅行のために、仕事を上手くコントロールしていることが印象的だった。

ロックバンドATATAのボーカル奈部川光義さんは、ケアマネジャーとして働く傍ら休日でバンド活動をしている。平日はサラリーマンとして働きながら、海外公演等も積極的に行っている。多忙の中、自身を追いこんで活動をされているのかと思っていたが、話を聞いてみたら違かった。「走るのに疲れたら、歩けば良い」そう語る奈部川さんは、自分なりにバンドとケアマネジャーの2足のわらじ履いて活動することを楽しんでいるように見えた。

私はゲストの方々の話を、自分にはとても真似できない、どこか別世界の話のように感じていた。

しかし偶然の学校代表の中井圭さんは、「ゲストの皆さんはすごい方々だけど超人ではない。真似できる」と

イベントの最後を締め括った。

私はすぐ中井圭さんの言葉の意味が理解できなかったが、しばらくして自分の中で答えが出た。ゲストの方々が充実した人生を送っているのは、常識に囚われない生き方をしているからではない。充実した人生を送るにはどうしたら良いか考えて、主体的に行動をしているからだ。そう考えた私はゲストの方々を真似して、主体的に行動してみたいと思った。

些細なチャレンジでもいい

私は充実した人生を送るため、「やりたいことに主体的にチャレンジする」という目標を立てた。その一環として最近ボランティアを始めた。元々何かやりたいことや、将来の目標が明確にある訳でなかった。ただ自分の中で、「一部の人しかできないような特別なことでなくても良い」とか「無理なく続けられるもの」ということを考えていたら、自然とボランティアに結びついた。自分がやりたいことは何か考えた際、仕事から離れて、金銭が発生しないところで、人の役に立つという経験をしてみたいという気持ちがあることにも気付いた。

私が参加したのはNPO(特定非営利活動法人)のボランティアだ。全国にあるNPOの相談役のような役割を果たしている団体で、NPOのコンサルテーションや、合同研修会の実施等幅広い活動を行っている。ボランティアスタッフは月2回ほど集まって、データ整理や、書類の仕分け等を手伝っている。まだ始めたばかりだが、慣れてきたらイベント運営のサポート等、幅広い業務に携われる。今後よりは関われる業務の幅を広げていきたいと考えている。

ボランティアではいままで仕事では感じることのできなかったやりがいを感じた。些細なチャレンジだが自分が歯車の一部ではなく、主役になったような感覚を得ることができた。

自分の人生を自分ゴトとして生きる

私は特別なスキル(絵の才能がある等)を持っている人や、大きなチャレンジ(起業する等)をした人以外は、社会の歯車になっていくと考えていた。しかしそれは違うことに気付いた。ボランティアに参加するといったちょっとした主体的なチャレンジで、「社会の歯車にされている」という感覚でなく、「社会の一部を担っている」という感覚を味わうことができた。

私は頭が良い訳でもなく、これといった才能がある訳ではない。社会に出てから特に、ただの一般人であることにコンプレックスを抱えていた。自分に特技なんかないと思っていたが、ボランティアを継続できたらそれが自分の特技になると気付いた。何の特技がない自分も勝負できるフィールドがどこかにあるかもしれない。

これも主体的に行動してみたからこそ見つけられた気付きだった。自分の強みは他の人が教えてくれるものではなく、自分で見つけるものなのだろう。

「社会の歯車になる」というのは、受動的に人生を送っている状態のことを指すのかもしれない。自分の人生を自分ゴトとして生きる。そんな当たり前のことできっと人生はもっと楽しくなる。

筆者プロフィール

「偶然の学校」3期生倉上啓
三度の飯よりドラえもんが好き。医療・福祉系企業採用担当。なで肩。